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2023年6月

2023年6月30日 (金)

「ヘンデルのリコーダーソナタ」終わりました

 6月22日、横浜市鶴見のサルビアホール音楽ホールでのヘンデルのリコーダーソナタ全曲演奏会が終わりました。昼夜二回公演でしたが昼の部は完売御礼、夜の部もほぼ満席で開催することができました。ご来場くださった皆さま、本当にありがとうございました。

 

 今回は日本で現在活躍中の製作家4人、オランダの製作家一人(この方は消息不明)の楽器、モデルも違うもの含めて6本を使って曲ごとに楽器を替えて演奏しました。ヘンデルのソナタの作品のすばらしさに加えて、楽器の音色の違いも楽しんでいただけたようで、このアイディアは大好評でした!

 

 

 プログラムに挟んだメッセージカード、メール、そのほかにもいろいろご感想をいただけたのですが、おもしろかったのは「これが良かった」という皆さんの感想がきれいにばらけていたこと。どの曲もどの笛も、それぞれにファンを獲得していました(笑)

 

 いただいたご感想に「楽しかった」「楽しそうだった」という言葉がたくさんあったことも嬉しいです。 

 

 そう、西山まりえさんとの初共演のヘンデル、私も本当に楽しかったです!

 

まりえさんに感謝♡

 今回登場のオール・スターズです。

左から

譜久島譲氏作 ソプラニーノ デンナーモデル

平尾重治氏作 ソプラノ テルトンモデル

平尾清治氏作 アルト デンナーモデル

斉藤文誉氏作 アルト ステンベルゲンモデル

斉藤文誉氏作 アルト ブレッサンモデル

ハンス・シンメル氏作 アルト オリジナルモデル

 

(クリックすると大きくなります)

 自分で企画するソロコンサートは最初がテレマン、二回目は二人のルイエ。3回目はヘンデル、と決めていたものの、なかなか時間が取れず、12年もの間が空いてしまいました。今さらソロコンサートを企画して聞きに来ていただけるかしら…と不安に思いながらスタートしましたが、途中から気持ちを切り替えて準備過程も思い切り楽しみました。チケットのことで初めての方とやり取りするのも楽しかったし、SNSにも積極的に投稿したり、プログラムにヘンデルくんも描いてみました♪

 

 大学時代にお世話になった音楽学の先生をお招きしたら、「リコーダー奏者はみんなヘンデルで始め、ヘンデルに戻ってくるのですね」ですって。名文句ではありませんか~?

 

 本プログラムの最後の曲、ヘ長調の終楽章は私が高校二年生の時に初めて出会った、「ちゃんとした楽器」としてのリコーダーの曲でした。コンサートの終わりにこの曲を吹きながら「ただいま~、おかえり~」と心の中で唱えていました♪

 このたび無事にヘンデルに戻ってこれて良かったです♪

 

 コンサートの折にたくさんのプレゼントをいただきました。またこのイラストは福岡在住の友人でイラストレーターの野田陽子さんが、イメージでコンサートの模様を描いてくださいました。「ヘンデルの風」というタイトルだそうです。

 

たくさんの方のご好意に大変感謝申し上げます!

ありがとうございました。

 

今回プロの方に頼んで動画を撮ってもらったので、そのうち一部、ご紹介いたします♪

 

2023年6月20日 (火)

ヘンデルのリコーダーソナタの楽譜その二

 歌は世につれ、と言うけれど、楽器演奏もまた同様で、ヘンデルの時代には楽器の演奏というのはとても人気のある娯楽でした。そのため多くの器楽作品の楽譜が求められました。ヘンデルのリコーダーソナタが載っている当時出版された楽譜は、アムステルダムのロジェ版(1730年)と、ロンドンのウォルシュ版(1732年)と二種類ありますが、実は両方ともロンドンのウォルシュが出版したものです。偽ロジェ版はヘンデルの許可なく出版した海賊版だったため、アムステルダムの出版業者の名をかたった、というわけです。その二年後に「より正確な版」としてウォルシュは新たな版を出しています。ただ、どちらもヘンデルの自筆譜をもとに作成されたわけではないことが、両者に同じ間違いがたくさんあることからわかっています。

 

 注目すべきは当時のロンドンに、他社の名をかたってまで出版し、また「正確な版」とまでして再出版するほどの状況があった、ということですね。そんなに楽譜が求められた、楽器を演奏する人がたくさんいた、ということです。

 

 最近、「楽器が売れない」と、楽器屋さんから聞きました。コロナになってから特にひどいけれどコロナ前からその傾向があったそうです。習い事の選択肢が増えて、ピアノを習う子供も減っているそうです。

 

 リコーダーは…どうなのかしらね?私の実感では減っている感じはせず、むしろ増えているような気がします。

人生100年時代。そうだ、リコーダーがあるじゃないか~!と思って始めました、という方に最近出会って、以来このフレーズが気に入っています。リコーダーは合奏も楽しいですがヘンデルのリコーダーソナタのような素敵な古い作品もたくさんあります。ペトルッチ楽譜ライブラリーIMSLP ではそういう作品が無料で入手できます。膨大すぎてどれを見ればわからない人は、拙ブログにリコーダー作品ばかりリンクを貼ってあるページ「ペトルッチの楽譜」があるので、参考になさってください。

 

 さて、ヘンデルのリコーダーソナタのコンサート、いよいよ明後日になりました!昼の部は完売しておりますが2,3席当日券が出る予定です。また、夜の部はまだお席ございますので、ぜひこの機会に大人気の作曲家、ヘンデルのリコーダーソナタをお聞きください。お問い合わせ

 

 写真は今朝撮ったクイーンエリザベスさまです♪

 

ヘンデルのリコーダーソナタの楽譜




 今度のコンサートでは前回ブログに書いた、33年前の結婚祝いの楽譜を使います。このS.P.E.S.版には三つのタイプのヘンデルの自筆譜が載っています。

 

 まず清書。「Sonata a Flauto e Cembalo」(リコーダーとチェンバロのためのソナタ)と、タイトルからきちんと、丸みのある太い筆跡で書かれているもの。ハ長調(1楽章と二楽章途中まで未発見)、へ長調、イ短調、ト短調がこれにあたります。

 

 



次に草書。神経質で急いではいるものの、かなり正確に、でも清書よりずっと細い線で書かれています。修正の跡もちょこちょこ残っています。Allegro など、楽章の気分の指定もところどころ抜けています。変ロ長調、ニ短調がこれにあたります。



三つめは、草書よりさらに、神経質でカリカリとした筆跡で書かれたもの。通奏低音の数字もついていません。ヴァイオリン・ソナタト長調とオーボエソナタ変ロ長調、ハ短調がこれに当たります。


 これらの曲が書かれたのは1724年から26年の3年間であるそうです。ヘンデルはこのころ、イギリス王室に出入りして重用されていました。十分な収入があり、出版のためにあくせくする必要はありませんでした。スミスというプロの清書屋を雇っていたので自分で清書などする必要はなかったのに、リコーダーソナタの4曲をきれいに清書したのは、当時家庭教師を務めていたアン王女のレッスンに使ったためだと言われています。ヘンデル自身が清書したものは他にもヴァイオリンソナタニ長調が残っています。

 

 ヘンデルの自筆譜に清書、草書、数字のないもっとラフなもの、と3つのタイプがあるのは、誰がそれを演奏したかの違いではないでしょうか。リコーダーに限らず、楽器演奏が紳士淑女のたしなみであった宮廷内にはそれぞれの楽器を能くする人物がいて、ヘンデルはそのために各種楽器のソナタを書きました。ヴァイオリンはわかりませんが、オーボエはプロの演奏する楽器でしたから、その通奏低音はヘンデルが弾いたのでは?バッハも自身が弾く通奏低音には数字をわざわざ書きませんでした。

 

この楽譜については、まだ面白いエピソードがあります。

 



ヘンデルのリコーダーソナタ

 ~リコーダーのスタンダードナンバーVol.3

夜公演

 

6月22日(木)19時開演 

 @横浜市鶴見区サルビアホール音楽ホール

 

チケット好評発売中!詳細はコンサートページへ。

昼公演は満席により前売り券の販売を終了しました。

夜公演はゆったりお聞きいただけます。

ぜひご予約ください♪

2023年6月 7日 (水)

ヘンデルのリコーダーソナタとの出会い・その2

ヘンデルのリコーダーソナタト短調を吹いて入学した桐朋学園大学古楽器科の、当時の主任教授はヘンデルの研究者として世界的に知られる、故・渡部恵一郎先生でした。私の在学中にも古楽器科の先生方とヘンデルの木管楽器ソナタ集の録音をしたりレクチャーコンサートをしたり、活発に活動なさっていましたが、身近にありすぎて私はボーっと過ごしてしまいました。

 

 研究科を終えて私が結婚するときに、フラウト・トラヴェルソの有田正広先生がヘンデルのリコーダーソナタほか、の自筆譜、偽ロジェ版とウォルシュ版の出版譜のファクシミリがセットになった楽譜をお祝いに下さいました。イタリアのStudio Per Edizioni Scelte(S.P.E.S.)社の、装丁の美しい、当時とても高価な楽譜です。結婚のお祝いに楽譜、とは、結婚しても勉強を続けなさい、という有田先生からのメッセージをいただいたかな、と思います。宝物の楽譜です。

 

 その後ヘンデルのリコーダーソナタはコンサートで演奏したり、教室の発表会でも必ず1曲は入る定番中の定番です。そのレッスンにもいただいた自筆譜を使っています。30年以上もレッスンをしていると、もはや懐メロです。でも、飽きないのです。これが名曲の底力。

 

 後になって、作家の村上春樹さんがヘンデルのリコーダーソナタが好きで、50年近く聞き続けていると知りました。今回チケットの件でやり取りさせていただく中にも、「これがやりたくてリコーダーを始めました」「高校時代に友人と一生懸命練習しました」「今度、発表会で演奏します(しました)」などのコメントがありました。皆さん、それぞれにヘンデルのリコーダーソナタへの思いをお持ちなんだなぁ、と改めて思いました。

 

 22日のコンサートが皆さんの良い思い出の一コマになれたらうれしいです。

当日はどうぞお気をつけて、お越しくださいね。やる気満々で、お待ちしています!

 

IMSLPで今は自筆譜も簡単に手に入るようになりました。

それはそれで良いことたくさんあるけれど。

 

この楽譜、有田先生からのお祝いメッセージが中扉にあります。紙の楽譜ならではの贈り物ですね。

 

ヘンデルのリコーダーソナタ~リコーダーのスタンダードナンバーVol.3

6月22日(木)19時開演

鶴見区民文化センターサルビアホール音楽ホール

 

チケット好評発売中。詳細はコンサートページへ。

 

昼公演(14時30分開演)はおかげさまで完売間近です。お早めにお求めください。

 

ヘンデルのリコーダーソナタとの出会い

 6月になりました。22日はヘンデルのリコーダーソナタのコンサート。おかげさまでたくさんのお客様に聞いていただけそうで、とてもワクワクしています!コンサートをより楽しんでいただけるように、ヘンデルさまとの思い出を書いてみますね!

 

 私がヘンデルのリコーダーソナタに初めて出会ったのは高校二年生の時です。小学校で地域のリコーダー合奏団に参加してから、リコーダーが大好きになったのですが、合奏団は入って2年もたたないうちに消滅。高校からは音楽の授業でもリコーダーは取り上げられず、どこかにリコーダーを吹けるところはないかな~、と、2年生になったときに帰り道にあった音楽教室にとことこ出かけて、「リコーダーの先生はいますか?」と聞きました。いなかったのですが,主宰のピアノの先生が知り合いを探して、私のために呼んできてくれました。

 

 現れたのは坊主頭で黒いコートを着た個性的な男の先生。ちりめんビブラートがかかった音をいい音、と信じていた私を「なんか勘違いしてるんだよね~」と言いながらも、優しくレッスンしてくれました。その時に初めて、リコーダーが古い楽器であることを聞き、渡されたのが、ヘンデルのヘ長調のソナタの4楽章。高校生なのでとりあえず指は回ります。でもちっとも楽しいと思わなかったし、ノンビブラートでふうっと吹く先生の音もちっともいいと思わなかった。なんか地味だな~、と思いながら吹いていました。

 

 イメージを変えなくては、と思ったかどうかは知りませんが、そのうち先生は私にレコードを渡して、「これを聞きなさい」と言うようになりました。あまり興味が持てなかったので「聞きました」と言って返すと、それを疑ったのか、また違うレコードを持ってきて「聞きなさい」と言うのです。また「聞きました」と言って返すと、また、違うレコードを。さすがに悪いと思って聞いてみたら、これがなかなか気に入りました。フランス・バロックのトリオのレコードでした。

 

 それをきっかけにその後も次々に渡してくれるレコードをちゃんと聞くようになり、音楽に目覚める決定的瞬間を迎えることになるのですが、話をヘンデルに戻すと、次の出会いはその約1年半後。大学の入試の課題曲がヘンデルのソナタト短調でした。

 

 ご存知の通り、ヘンデルのリコーダーソナタは譜面を見ると、そんなに難しそうではないのです。音を並ばせるだけなら、初級の方でもできます。遅い音楽の目覚めに焦りを感じていた高校3年生の私は、猛烈に練習しよう!とメラメラ燃えていたのですが、そんなメラメラもヘンデルのリコーダーソナタのどこにそのエネルギーを注入してよいかわからず、途方に暮れたのを覚えています。(続く)

 

ヘンデルのリコーダーソナタ~リコーダーのスタンダードナンバーVol.3

6月22日(木)19時開演

鶴見区民文化センターサルビアホール音楽ホール

 

チケット好評発売中。詳細はコンサートページへ。

 

昼公演(14時30分開演)は残席僅少につき、お早めにお求めください。

 

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